本当は手を繋ぎたいんだけどね。
手を差し出すのは簡単だ。
それでも素直には差し出さない。
君ならわかってくれていると思っているから。
君の少し前を歩く。
手をうしろに組みながら。
手のひらを君に見せながら。
平静を装っているけれど、内心はドキドキ、バクバクなんだ。
気づいてくれるかな?
わかってくれるかな?
もう、けっこう歩いているよ。
会話もそれなりにしているよ。
「んっ」って手を差しだすのは簡単だ。
それでも素直には差し出さない。
恥ずかしいから。
背中で気配をビシビシに感じているよ。
君の動きを把握できるように。
まだかな。まだかな。
せめてうしろのシャツをつまんでくれてもいいよ。
ちょこん、ってつまんでくれてもいいよ。
その仕草、かわいいから。
シャツが伸びることなんて気にしないから。
君と会うから着てきたお気に入りのシャツだけど。
しょうがないな。
そんな顔して、手をつないできた君を見たいんだ。
君はぼくを好きなんだって実感したいんだ。
気づいているかい?
さっきより歩くスピード遅くしたんだ。
言えないぼくの気持ちを察しておくれよ。
君の気持ちは察せないから。
まだかな?まだかな?
あともう少し距離を縮める必要があるね。