譲れないことは誰にだってある。
ケンカするほど仲が良いって言うけれど、できたらケンカはしたくない。
良いことなんてひとつもない。
後から仲直りして振り返ったら笑い話になる可能性はあるけれど、そんな話術は持っていない。
それでも俺と君は、悲しいけれどケンカをしないわけではない。
なぜケンカをするのか考えてみた。
きっかけは些細なことばかりで覚えていないけど、きっと譲れないことに触れたからなのだろう。お互いに。
譲れないことは譲れない。
たくさんあるわけじゃなく、たったひとつのことでも。
それくらい譲ればいいじゃない、と言われても。
譲ってばかりだと、逆になにも信用できなくなる気がする。
譲れないことは誰にだってある。
俺も君も。
そこに触れたら、お互いの主張が出てきて当然。
ケンカすることは悪いことじゃないのかもしれないけれど、本音を言えばケンカはしたくない。
俺が譲れないことに対して、君の言うことも一理ある。
それでも譲れない。
俺の言うことに理がないとしても、譲れないことはある。
譲れないことを譲らないことで、君に勝ちたいわけではない。
もちろん、負けたいわけでもない。
そこは五分五分で。
それが一番、居心地が良いから。
譲れないことを懸けたケンカに勝ち負けはないとしても。
きっと俺はいつも負けている。
勝敗は五分五分ではなく、圧倒的。
一番譲れないことは、たったひとつだけだから。
そのためなら、俺はいつでも負けを受け入れる。