足を踏み出すけれど元の位置に戻す。
あーあ、今日もやっちまったよ。
なんであのとき、目を逸らしたんだろう。
なんであのとき、話しかけなかったんだろう。
なんであのとき、あそこにもう少しいなかったんだろう。
数え上げればきりがない。
ようやく訪れたチャンスをことごとく逃すんだ。
もっとうまくできたのに。
もっと君と近づけたのに。
後悔ばかりが頭をよぎる。
俺はもっとできるはずなのに。
根拠?
そんなものはない。
でも、俺はもっとうまくできるはずなんだ。
「今」はそう思える。
「今」だけはそう思える。
でも「今」が過ぎると、また後悔するんだ。
君はなにも思わないんだろうね。
あのときああしていれば…っていう俺の後悔なんて、知らないだろうから。
あのときああしていれば、「今」はもっと違っていたはずなんだ。
あのときああしていれば、君は俺の気持ちに気づいてくれたかもしれないんだ。
君はもう帰るのかい?
後ろ姿ばかり追ってしまう。
君の後ろ姿はもう見飽きたよ。
あ、それは嘘。
見飽きることはない。
ただ、君と向かい合わせに立てるのはいつになることやら。
バイバイ、さえも言えない俺。
「今」なら言えるよ。
バイバイ。
「今」いろいろ思っていたら、君はもういない。
宙ぶらりんになった、バイバイ、が虚しい。
明日こそは!って「今」なら思える。