正当化しようと思えば思うほど、どんどん遠くなっていく。
嘘はつかないで。
君は俺にそう言う。
出会ったときから、そう言っていた。
俺はいつもその言葉を片隅に置いている。
君と約束したから。
ごめんよ。約束は守れていない。
悪いのは俺だ。
だから言い訳だけさせてくれないか?
肝心なところは嘘をついていない。
絶対に。
嘘をつくのは、君のことを想って、という前提があるからなんだ。
なにを言ってるんだ、って思うでしょう。
俺もそう思うよ。
だって言い訳だから。
でも小さな嘘は必要だと思う。
誰も損しない嘘は存在すると思う。
君にはわかってほしんだ。
「今日のごはんおいしかった?」
君が時間と手間をかけて俺のために作ってくれた料理。
塩がきつかったけれど、食べられないほどではない。
それに俺は濃い味が好きだから。
おいしかったよ。
これって嘘だけど、嘘じゃないんだ。
「こっちの服かわいくない?」
君が両手に持った洋服。
君は右手のほうがお気に入りのようだ。
俺は左手に持ってるほうが好きだけど。
そうだね。
これって嘘だけど、嘘じゃないんだ。
「今日は家にいるよ」
会いたいと思っていても言えないときもある。
これって嘘かい?
会いたいけれど、今日君はとても疲れているだろ?
俺に会うと、君は俺に気を遣ってくれるでしょ。
ゆっくり休んで、また明日俺に笑ってくれよ。
どうしても嘘をついてしまう。
君を傷つけたくないから。
本当に傷つくかどうかは俺にはわからないけれど、言えない怖さがあることもわかってほしい。
君のためでもあるけど、俺のためでもあるんだ。
だから絶対君にバレないようにするんだ。
自分に嘘はつけないから。
嘘をついている自分はわかってしまうから。
君にだけはバレないように必死なんだ。
小さな嘘がバレて君が傷ついたら、俺は謝るしかない。
許してもらえるかどうかはわからないけれど、謝るしかない。
俺にとっては小さくても、君にとっては大きいかもしれないから。
俺にとっては大きな嘘はつかない。
君が傷つくようなことをして、俺がそれを誤魔化すための嘘はつかない。
それだけは約束する。
さっきも言ったけれど、俺がつく嘘は、君のことを想って、が前提だから。
肝心なところは嘘つかない。
だから君が嘘をついたら、俺は気づかないフリをする。
きっと君も俺を想ってついた嘘だから。
嘘じゃない。
気づかないフリをするんだ。
俺は君の嘘に気づけるのだろうか?
自信は、ない。
今のところそんな場面には遭遇していない。
もしかしたらあったのかもしれないけれど、俺は本気で気づいていない。
俺は嘘をついたぶん、君に本当のことを話すよ。
聞かれてもいないことを、いろいろ話すよ。
人はそれを嘘が下手だと言う。
でも俺は褒め言葉だと捉えるよ。
嘘をついたのがすぐわかる人って、信用できるでしょ。
だから俺を信じてほしい。
嘘は自分のためでもあるけど、君のためでもあることを。
嘘をつかないという君が俺に嘘をつくなら、これがいい。
俺が好きだ、と言い続けてほしい。
ずっと言ってほしい。
嘘でもいいから、ずっと言ってほしい。