裏の裏の裏まで読んだつもりでいると、表がわからなくなる。
男のくせにって言われる。
男がみんな道に詳しいとは思わないでくれ。
そう、俺は方向音痴だ。
生まれながらの。
俺だけじゃないよ、男で方向音痴なのって。
女の人でいい匂いがしない人もいるでしょ?
それと似たようなもの。
でも俺はそんじょそこらの方向音痴とは違う。
生まれながらの、方向音痴だから。
2分の1でも間違える。
右だと思ったら左。
左だと思ったら右。
だから右だと思ったから左を選んだら右。
その逆を読んで右を選んだら左。
どっちを選んでも、結局道を間違える。
勘が鈍いんだろうね。
頭が悪いんだろうね。
想像力が足りないんだろうね。
いいんだ、方向音痴でも。
遠回りしても、時間がかかっても、目的地には着くから。
無駄ではないんだ、きっと。
最短距離じゃなくても、効率が悪くても、そこの過程が俺には必要なんだ。きっと。
そして必ず、目的地に着くんだ。
地図は読めるよ。
地図があればどこにだって行ける。
でもそれじゃ、面白くないだろ?
自分で考えて、間違えて、戻って、間違えて、こけて、こっそり泣いて、また進んで、傷だらけになって、そして最後に笑うんだ。
俺は必ず目的地に着くよ。
どれだけ迷っても、傷ついても、離れても、わからなくなっても。
必ず、君のところに辿り着く。
でもひとつだけ問題がある。
君のいる場所がちょこちょこ変わること。
君は方向音痴じゃないから、移動に時間がかからないから、いろんなところへ向かうんだ。
その度、俺は道に迷う。
君の居場所はわかっているけど、そこに行き着くまで時間がかかる。
でも俺はきっと君のいる場所を探し出す。
どれだけ時間がかかっても。
どれだけ遠回りしても。
きっと君のところへ辿り着く。