「理論上は可能」って、遠回しに諦めろって言ってる?
君をうしろに乗せて走っていきたいんだ。
だから君はうしろから俺を強く抱きしめていて。
暑くなったらスピード上げて風を受けよう。
風が強くなったらこけないようにスピードを落とすよ。
雨が降ったら濡れちゃう。
でもふたりで濡れるんだったら大丈夫でしょ?
どこかですぐに風呂に入ろう。
寒くなったらちょっとしんどいかもね。
だからあったかい防寒着を買おう。
お揃いのやつを。
気持ちいい天気のときはどこか遠出しよう。
どこがいい?
観光名所がいい?
穴場がいい?
いろいろ調べるよ。
いろいろ調べれば良いところが見つかるはず。
君が楽しめるところ。
俺は君が楽しければそれでいい。
君と一緒だったら、きっとどこでも楽しいから。
いつでも君の体温を感じられるところにいたい。
だからうしろから俺を強く抱きしめてほしい。
君の鼓動も感じられる。
ふたり乗りなら、それができる。
「怖くない?」
かっこつけて君に言いたいんだ。
「俺がいるから大丈夫」
かっこつけたいけど、さすがにそれは恥ずかしい。
代わりに俺を抱きしめてくれている君の手をしっかり握るよ。
ずっと君をうしろに乗せていたかった。
ずっと君と走っていたかった。
ずっと君の手を握っていたかった。
でも、もう無理なんだ。
俺の持ってる免許だと、君とふたり乗りできなくなった。
昨日まで良かったのに。
どうしてダメになったんだろう。
うしろに乗っていたはずの君はもういない。
新しい免許を取るために、もっと勉強するよ。
どこかに良い参考書ないかな?
いろいろ調べたけれど、君がいなくなった理由はどこにも載ってないんだ。
たくさん勉強したら、きっと新しい免許が取れるよね。
君とふたり乗りできる免許が。
たくさん勉強したら、きっとわかるよね。
君がいなくなった理由が。