きっと俺には煩悩が108以上ある。
君を知ったころは、目が合うだけでうれしかったのに。
次第にあいさつをするようになり、当たり障りのない会話をするように。
くだらない話をするようになってからは、目が合うだけでは満足できなくなってしまった。
俺はどこまでも欲深い男なんだ。
君を好きだと気づき、付き合いたいと願い、幸運にも願いが叶った。
でもそれだけじゃ満足できなくなっている。
もっと一緒にいたいと。
俺はどこまでも欲深い男なんだ。
ほんの少し、一緒にいられるだけで。
君が近くにいてくれるだけで。
ただそれだけでうれしかったはずなのに。
願いが叶えば、新たな願いが生まれる。
俺はどこまでも欲深い男なんだ。
君のやさしさもそうなんだ。
はじめは些細なやさしさがうれしかった。
俺のために、って思えた。
でも今は違う。
君のやさしさを、当たり前だと受け取ってしまっている。
今以上のやさしさを、求めてしまっている。
勝手に勘違いしてるんだ。
君のやさしさを。
当たり前のものだと、勘違いしてるんだ。
君の思いやりを。
俺に対する想いを。
やさしさは積み重ねるものじゃないのに。
全部、ゼロからのスタートなのに。
そのたび、そのたび、君のやさしさが発動しているだけなのに。
俺は勘違いしてるんだ。
君がくれるやさしさを。
勝手にチャージして、ハードルを上げてしまっている。
こんなやさしさでは物足りないって。
君のやさしさに、違う意味で甘えてしまってる。
ごめんよ。
俺はどこまでも欲深い男なんだ。
俺の欲望はとどまることを知らない。
現状維持は後退だ。
響きはかっこいいけど、君に対して言うことじゃないね。
バカなんだ、俺。
これからは気をつけるよ。
君のやさしさを当たり前だと思わないようにする。
君のやさしさを見逃さないようにする。
君のやさしさを勘違いしないようにする。
俺の欲望はとどまることを知らない。
だから、悪いけどもう少し俺に付き合ってくれ。
俺の今の欲望は、君ともっと時間を積み重ねること。
やさしさは積み重ねることができない。
でも時間ならできるだろ。
だから君と時間をこれからも積み重ねていきたい。
いろんな思い出と一緒に。
だから、悪いけどもう少し俺に付き合ってくれ。
ただ心配なことがひとつある。
君の欲望を、俺は満たせているのかな。
自信は、まったくない。
だから、もっと精進します。