ホラーではなくラブストーリーだよ。
君のことを全部好きだとしよう。
全部好きだということは、隅々まで好きだということ。
じゃあ、仮に、君がバラバラになっても俺は君のことが好きなのかな?
寝息をたてる君を見て、思う。
バラバラになった分だけ、君への想いは増えるのか。
バラバラになった分だけ、君への想いは分散するのか。
頭、胸、尻、腕、脚、足、首、指、爪…。
皮膚に内臓……。
言葉にすればグロテスク。
それでも君を成す、大切なパーツだ。
俺の好みが重なり合って君が出来上がったわけではない。
君のパーツの中で理想的だなと思えるのは、せいぜいひとつかふたつ。
でも組み合わさると、君が出来上がり、俺は君の全部が好きなんだ。
やさしさ、怒り、悲しみ、思いやり、喜び、嫉妬…。
過去に未来、現在……。
ひとつひとつを手に取っても、それはそれでしかない。
君がひとつになれば、君でしかないように。
いびきをかいている君を見て、思う。
バラ売りしていても俺は買わないよ。
それが君のパーツだとわかっていても。
だって組み合わせても君にはならないから。
パーツのほかにも、君になるにはなにかが必要なんだろうね。
それがなにかは、わからないけど。
君のどんな部分も、君だとわかっているから許せるのだろう。
君の手がそこに転がっていても、君の怒りがそこに転がっていても、俺は気にも留めない。
でも君がそこに転がっていたら、俺はどうなるのかな。
今、俺の前には寝ながら笑っている君がいるけど。
パーツだけを愛することはない。
でも、どれも、君には必要なんだ。
なにかが欠けたら、到底君には及ばない。
だから結局、すべてのパーツが必要。
君に無駄なところなんて、ひとつもないんだ。