はじまりがあれば終わりがあり、またはじまる。
ドンドン、ピーヒャラ、ドドーン、ザワザワ……。
祭りの季節だ。
あちこちで祭りが行われている。
この日ばかりは、暑くても文句を言わない。
祭りがある日は、特別な日だから。
屋台が立ち並んでいる。
焼きそば、チョコバナナ、イカ焼き、射的、たません、お面にヨーヨー。
焼けたソースの香りが立ち込める。
裸電球にラジオから流れるBGM。
はしゃぐ人々の声に、入り乱れる足音の数々。
肌に浮かび上がる汗の数だけ、笑い合う。
すべての感覚を刺激される。
きっと誰もが夢の中にいるように、からだが浮き上がっている。
祭りで覚える高揚感は、DNAに刻まれているのだろう。
君と出会ったときのように。
すべての感覚が動きはじめる。
花火があってもなくても。
大きな祭りでも小さな祭りでも。
そこに大きな違いはない。
祭りが終わったあとの寂しさに、大きな違いはない。
君と別れたあとのように。
祭りがはじまれば思い出す。
眩しかったときはもう戻らないのだと。
夢から覚めたのではない。
現実の続きなんだ。
祭りは夢ではない。
現実の一部なんだ。
夢を見ているのも現実なんだと、思い知る。
昨夜はあんなに眩しかった通りが今朝はいつも通り。
取り残された装飾やゴミが、夢ではなかったことを証明している。
思い出は消えない。
呼び起こされる。
祭囃子に踊らされて、浮足立っていたあのころを。
祭りは終わったんだ。
隣に君がいないから。
また祭りがはじまる。
隣に君はいないのに。
祭りのたびに思い出す。
眩しく騒がしい空間にいた君を。
祭りが終わるたびに実感する。
夢ではなく現実なのだと。
祭りのあとは、暑さが堪える。