揺れる心は乙女だけのものじゃない。
吊り橋理論って知ってる?
有名だから知ってるよね。
不安や恐怖を強く感じたときに出会った人に対し、恋愛感情を持ちやすくなることなんだって。
外的な要因でドキドキしても、恋愛のドキドキと勘違いしちゃうんだって。
なんじゃそれ、って感じ。
間違える?
ドキドキの種類を間違える?
有名な理論だけど、なんか信用できない。
ただ、少なからず、興味はある。
間違った理論だと、自信を持って言えない自分がいるのは確か。
本当だったらいいな、って思う自分がいるから。
恋愛感情は不安や恐怖とイコールってことでしょ?
好きになった相手は俺のことをどう思っているのだろう、という不安。
嫌われたらどうしよう、という恐怖。
イコールだね、これは。
机上の空論かどうかは、行ってみればわかる。
何事も自分の目で確かめないと、納得できないでしょ?
俺も君も。
だから一緒に吊り橋に行ってみよう。
ひとりで行ってもしょうがないから。
という口実でデートをしよう。
吊り橋なんて渡ったことない。
どこにあるのかも知らない。
それに俺には吊り橋理論は適用されない。
だって、吊り橋を渡る前から君に惹かれているから。
実験として成り立たない。
だから君と行くんだ。
もし、万が一、吊り橋理論が君に適用されたら…。
それはそれで俺にとってはラッキー。
吊り橋理論には半信半疑だけどそんなことはどうでもいい。
誰も損しないでしょ。
俺はうれしい。
君もきっとうれしい。
俺に惹かれた時点で両想い確定なんだから。
それに吊り橋って中々行く機会がないから。
楽しそうだよね。
だから一緒に行こう。
どこかにある吊り橋に行こう。
ただ問題がひとつあるんだ。
吊り橋理論を調べたところ、誰でもいいってわけじゃないらしい。
それほど男前じゃない場合には、理論が適用されにくいらしい。
なんじゃそれ、って感じ。
町中では厳しいからこそ、吊り橋までわざわざでかけようって話なのに。
理論として成り立ってない。
成り立っているのは、男前はモテる、ってこと。
吊り橋なんか全く関係ない。
でも町中ではどうにもこうにもならないから。
万が一を期待して吊り橋に行こう。
もし吊り橋でもダメだったら…。
そんなことを考えると不安や恐怖が俺を襲う。
君のことを考えるたび不安や恐怖が俺を襲う。
これってやっぱり恋愛感情なのかな。
なるべく高いところにある吊り橋を探しておくよ。