オセロは白黒同じ大きさだけど囲碁は黒が少し大きい。
きっと答えは決まっているのだろう。
「白と黒、どっちがいいと思う?」
ショッピングに来て鏡を見ながらふたつの服をからだにあてる君。
鏡越しに俺に問う。
きっと君の中で答えは決まっているんだろ?
そう思いながら、一応は考えるフリをする。
これまでの君の傾向からして、君は白を選ぶだろう。
同じような服をいくつも持っているのに、君はまた白を選ぶだろう。
君の性格、嗜好を考慮すると、君は白を選ぶだろう。
白か黒か。
君の答えはもう決まっている。
そして俺の答えも決まっている。
黒。
君の答えを知る前に、君が白を選ぶと思いながらそれでも俺が黒と言った理由を言わせてくれ。
君には言わないけど、説明しよう。
白と言って無難に攻めることもできた。
無難というより安全策というより、白に決まっているから。
それでも俺は黒と言う。
君に黒を選んでほしいから。
俺が黒と言ったことで、君の中で決まっていたはずの白という選択を覆してほしいんだ。
君は黒が似合うから。
白も似合うけど。
君が白を選びたがっていることは重々承知している。
そのうえで、黒を選んでほしい。
俺の言葉で心変わりしてほしい。
勝負に出てるんだ、俺は。
でもこれだけが理由だと君は納得しないかもしれないから、もうひとつ。
俺はカレーうどんが好き。
君も知ってるだろ?
いつも俺が食べたいって言っても君は断る。
なぜならいつも君は白い服を着ているから。
そりゃそうだよ。
白い服着てカレーうどん食べるのは勇気がいる。
俺にだってそのくらいわかる。
だから黒を選んでほしい。
買ったばかりだと躊躇するかもしれないから、少し時間が経ってから食べに行こう。
君と一緒にカレーうどんを食べたい。
カレーうどんを一緒に食べる仲って、きっと深い仲だと思うんだ。
焼肉よりも、きっと。
白か黒か。
君の答えを聞かせておくれ。
俺が黒を選んだことにこんな理由があるなんて、君は思わないだろう。
君が知る必要はないけど。
黒は俺のただの願望だから。
俺は黒がいいと思う。
でも君は白を選ぶんだろ?
白は膨張職だよ、いいの?
えっ?
黒?
本当に?
白じゃなくていいの?
まさか、本当に黒を選んでくれるとは。
理由を聞いてもいいかい?
俺が言ったから?
まさか、カレーうどん?
…………そうだよね。
そりゃ、そうだよね。
同じような服をいくつも持ってるもんね。
白い服なんてたくさんあるもんね。
自覚はあったんだね。
白は膨張職だから。
デザインによっては太って見えるからね。
大丈夫。
君は太ってないから。
気にしすぎだよ。
俺のほうがいろいろ気にしすぎな気がするから。
君がどんな理由で黒を選んだかなんて、全然気にしてないから。
だから今度、その服を着てカレーうどんを食べに行こう。