薬と毒は表裏一体。
あの子が欲しい。
あの子じゃわからん。
相談しよう。
そうしよう。
子供のころ遊んだ歌。
大人になっても誰かを欲するとき誰かに相談するのは、子供のころの影響なのだろうか。
君は俺に報告してくる。
あの人とこんなことがあったとか、あの人はこんな人なんだとか。
君は楽しそうに、時折、寂しそうに俺に報告する。
君は俺に連絡してくる。
あの人と今度デートするとか、あの人とケンカしてしまったとか。
君は嬉しそうに、時折、泣きながら俺に連絡してくる。
真夜中だろうが早朝だろうが。
君は俺に相談してくる。
あの人とのことについて、今後について。
いろいろ、と。
「報・連・相」は基本だから。
俺と君は上司と部下ではないからそこまでしなくてもいいと思うこともあるけど、君が俺に相談しにくれば俺は思ったことを言う。
でも、これだけは覚えておいて。
相談には乗るけど、俺の意見は聞かないで。
あの人のことについては俺もけっこう知ってるつもり。
君からいろいろ聞かされているから。
写真でしか顔は知らないし、話をしたことなんて一度もない。
知人でも友人でもないけど、あの人は俺にとってどこか近しい存在となっている。
不思議な感じだけど。
俺の知ってるあの人は、君にとってのあの人と同じ。
君から聞いた話でしかあの人のことを知らないから。
仮に俺があの人と知り合っていろいろ話をしたら、きっと君が思ってるあの人と同じ印象を抱くとは思えない。
だってそれは人それぞれ。
だから俺の意見は聞かないで。
いつも君は楽しそうに嬉しそうに話すから、あの人とうまくいってほしい。
それは事実だ。
でもそれが全てでは、ない。
100%では、ない。
うまくいってほしくないと願っている俺もいる。
それも事実だ。
でもそれも100%では、ない。
君が時折見せる悲しい顔は見たくないし、時折聞こえてくる寂しい声は聴きたくない。
うまくいってほしいし、うまくいってほしくない。
俺の葛藤を君に知られるわけにはいかない。
だから俺の意見は聞かないで。
参考にもしないで。
俺の本当の願いは別のところにあるけれど、それを君に言うことはない。
君があの人のことじゃなく、君のことを俺に話すようになってくれたら。
君が君のことを俺に報告・連絡・相談してくれたら。
そのとき俺の本当の願いを君に伝えるよ。