目に見えないからこそ大切にしたいことがある。
つながることのない手。
もう君と手をつなぐことはないのだろうか。
手を離したら、もうおしまい。
そんなわけはない。
手はつないでいなくても、俺と君はつながっている。
未練がある訳ではない。
まったくないと言ったらウソになるけど、その気はない。
勘違いしないだろうけど、勘違いしてほしくない。
君には感謝しかないから。
君には笑っていてほしいから。
手をつないでいなくても、俺と君はつながっている。
かけることのない連絡先を開く。
見つめるだけで指は動かない。
君に電話をかけることはしない。
もちろんメールもしない。
君のSNSを拝見することもフォローすることもない。
だって未練はないのだから。
未練もないけど勇気もない。
番号変わってたら、とビビる俺もいる。
こんなんだから君と手をつなげなくなったのだろう。
隣を歩くこともなくなったのだろう。
でも俺も君も歩いている。
今も歩いている。
君の隣には俺じゃない誰かがいるのかもしれない。
俺はひとりで歩いている。
でも寂しくなんかない。
俺と君は過去でつながっているから。
俺も君も、それがあるから今があるから。
手をつないでいないからつながっていないだなんてウソだ。
隣を歩いてないとつながっていないだなんてウソだ。
お互い見えないところにいるけれど。
お互い別の方向へと歩いているけれど。
どこかできっとつながっている。
これから先、また手をつなぐのか隣を歩くのかはわからない。
きっとそんな時は訪れないのだろうと思っている。
それでも俺と君はつながっている。
君が俺のことをどう思っても。
君が俺のことを思い出したくなくても。
君が俺のことを大嫌いになっても。
君が俺のことを憎んだとしても。
俺と君はつながっている。
つながりが終わる時。
それは、君が俺のことを忘れる時。
手をつなぐどころか、会うことも声を聞くことも隣を歩くこともないだろう。
それでも俺は君に感謝している。
それだけで俺と君はつながっている。
見知らぬ誰かのために平和を望むように。
君が誰かの隣で笑っていることを、俺は望んでいる。
手をつないでいなくても、それだけで俺は君とつながっていると思える。