俺の知らない時間を過ごした君はとても綺麗だった。
あのころ抱いていた恋心。
終わったそれを、数年ぶりに会ったあなたに伝えることはできない。
あのころの面影は残っている。
あのころよりもあなたは綺麗になっている。
俺の知らない時間をあなたは過ごした。
あのころはあんなにあなたのことを知りたいと思っていたのに。
今は知りたくない。
というより、知らない方がいいと思っている。
あなたの薬指に光る指輪。
俺の薬指も光っている。
けれど、デザインはまったく違うもの。
思い出話に花が咲く。
あのころ花は咲かなかったけれど。
今咲いている花は随分と綺麗だ。
知らなくたって楽しい。
こうやって話せるだけで十分。
あのころを肥料とした、楽しく切なく美しい花。
あなたのおかげ。
それすら伝えることはできないけれど。
伝えないからこそ、きっと綺麗なんだ。