夏休みは量で冬休みは質。
冬休みなんていらない。
日常が非日常になることが辛いから。
どこに行っても、人がいっぱいだし。
どこへも行かなかったら、時間がいっぱいだし。
なによりも。
君に会えなくなる。
日常ではほぼ強制的に会えるのに。
冬休みになったら強制的に会えなくなる。
冬休みという非日常では、君と会えないという非常事態が続く。
会えないという気持ちがいっぱいだし。
ようやく終わった冬休み。
久しぶりに会えたら、ようやく俺の年が明けた。
日常生活がはじまる。
家にずっと居たよ。
君がそう言えば、きっと俺はほっとする。
いろんなところへ遊びに行ったよ。
君がそう言えば、きっと俺はほっとしない。
君が楽しそうならそれでいい。
そんなことを言いながら、そんなことは思っていない。
冬休みなんていらない。
クリスマスに大晦日に正月。
イベントありすぎ。
俺の知らない君がまた増える。
冬休みなんていらない。
そんなことを言いながら、そんなことは思っていない。
次の冬休みこそは、君と。
そんなことを言いながら。
終わったばかりの冬休みを思っている。
一寸先は想定外。
思っていたのとなんか違うけど。
今年のはじめに思っていたのとなんか違うけど。
約1年経った今はなんか違うけど。
今年がもう終わる。
そんなことを言いはじめたら。
小さいころ思っていた今の俺は随分と違う。
思っていたのとなんか違う。
その思いは消えない。
おそらく、ずっと消えない。
あのころ想像していたものと。
今はすべてが違う。
あのころの俺は知らないから。
君と出会うことを知らないから。
約1年前の俺だって知らなかったから。
君への想いがこんなにも積もり積もるなんて。
想像なんてしていなかった。
想像していたとしても、遥か彼方。
世の中のすべては誰かの想像から成り立っているのに。
俺の想像力なんてちっぽけすぎて。
自分でも嫌になっちゃうよ。
ありがとう。
君に言う。
なにが?
君が言う。
来年もよろしく。
俺のちっぽけな想像力じゃあ。
そんなざっくりしたことくらいしか言えない。
よろしく。
君は言う。
あまり先のことは考えないようにする。
考えたって、想像したって。
無意味なことになるだろうっていう想像力くらいはあるから。
クリスマスソングは意外と失恋ソングが多い。
クリスマスソングのようにはいかないクリスマス。
ロマンティックでもドラマティックでもないクリスマス。
お洒落なレストランなんて行かないし。
大きなチキンも用意できない。
花束なんて恥ずかしいし。
サプライズなんてもってのほか。
そんな俺を許してほしい。
クリスチャンではないけれど。
君と神様に懺悔しよう。
小さなケーキを買おう。
ふたりで十分な大きさのケーキを。
サプライズはできないけれど、君の欲しがっていたプレゼントを買いに行こう。
ふたりで一緒にクリスマスを過ごそう。
世の中の流れに乗ったクリスマス。
世の中の流れには沿わないクリスマス。
なんとなくのクリスマス。
クリスマスソングのようにはいかないけれど。
俺と君のクリスマス。
なにを祝っているのかわからないけれど。
いつもと小さな変化しかないけれど。
たまにはこういうのも悪くない。
泣いているよりは笑っているほうがいい。
未来を思う。
この世に選択肢は無限で。
その数だけ未来があるとして。
俺にとっては2通りの未来しかない。
君と一緒の未来。
君と別々の未来。
選ぶのは、俺であり君である。
どっちを選ぶかで今を選ぶ。
俺はいつも、君と別々の未来を思う。
変な意味じゃないよ。
君と別々の未来を思った反対のことをすれば、君と一緒の未来につながるってこと。
プラスのことばかりだと、お互い疲れてしまうから。
時にはフラットもマイナスも必要なんだ。
でも消去法でもネガティブでもない。
わかるかい?わかってくれるかい?
俺はいつだって選択してばかり。
コンビニ寄っていくか、いかないか。
この服を着るか、あの服を着るか。
いつだって選択してばかり。
君を基準として選択してばかり。
俺はいつだって、君と一緒の未来を想っている。
隠した部分は余計に気になる。
マスクなんかしてどうしたの?すっぴんなの?
君に笑いながら言う。
風邪ひいたの。
君は笑わずに言う。
熱あるの?
あんまり。
食欲は?
あんまり。
君の声は鼻声で、ゴホゴホと咳を2回した。
辛そうだね。
風邪ひいたから。
どんな顔していいのかわからない。
君が体調を崩したとき、俺は自分の無力さを思い知る。
病院行って、薬飲んで、温かくして寝て。
そんなテンプレなことしか思い浮かばない。
気の利いた一言は言えず。
辛そうにする君に話しかけることすら躊躇う。
無力。
文字通り、なにもできやしない。
ならば。
せめて。
マスク越しにキスをする。
何してんの?
風邪はうつせば治るっていうだろ?
マスクしてるからうつらないよ。
じゃあ、マスクとってよ。
嫌だ。
なんで?
すっぴんだから。
何度も見てるだろ。
すっぴんを見せても私の素顔を見せたわけじゃないから。
君は鼻声で咳をする。
何だ、それ。
マスク越しにもう一度キスをする。
君はようやく笑った。
マスク越しはなんか新鮮だな。
俺も笑う。
そのまま君のマスクをずらし、キスをする。
これで治るよ。
本当にうつるよ。
いいよ。でも俺が風邪ひいてもお見舞いにはこないで。
何で?
うつるといけないから。
何、それ。
あ、やっぱりお見舞いもないのは寂しいから、マスク越しにキスして。
うーん、考えとく。
そのときはすっぴんでよろしく。
何で?
すっぴんも好きだから。あとできたら、素顔も見せて。
君は咳をする。
マスクしているのに、口を両手で隠しながら。
奇跡の基準は人それぞれ。
奇跡は起きるものじゃない、起こすものだ。
誰かがそう言っていた。
それならば。
俺のやれることを目一杯やるだけ。
奇跡を起こすには。
待っていたらダメ。
動かないと。
こっちから近づいていかないと。
来たる時のため。
やるべきことはやった。
あとは目を閉じ、時の流れに身を委ねる。
時が来た。
奇跡が起きた。
君が起きた。
いつもなら約束すっぽかして寝過ごす君が、起きた。
俺はやるべきことをやった。
なるべく早く君を眠らせた。
計画立てて、いろんな手段を使って。
だから、奇跡が起きたんだ。
君が起きるという奇跡が起きた。
偶然でも必然でもない。
これは奇跡なんだ。
俺が自ら奇跡に近づいていったから。
それでもまだ油断はできない。
君は起きたけれど。
二度寝しないよう。
これから俺は、あらゆる手段を尽くすだろう。
奇跡はまだ続く。
これからも起こす。
久しぶりにデートに行こう。
ちょっと外へと出かけよう。
新しい奇跡を起こしに行こう。